卒業してから気づく学生のエモさ 小説『キケン』
あさひです。
学生ってなぜか熱意に溢れてる。
体育祭だの文化祭だの部活だの。
こんなこと言ってしまえば無意味なこと。
ただの学校行事で、たかが部活。
でも損得なんて考えない、何のためかなんて考えないのが学生。
無意味なことを一生懸命やれるのって学生の特権なんだよね。
『キケン』の舞台は某県某所の工科大。「機械制御研究部」通称キケン。
主人公元山とその友達池谷は勧誘されるままにキケンに入部してしまう。
一癖も二癖もある先輩とその所行に振り回される後輩たちの騒がしい日常。
理系男子達の爆発的熱量に胸焼けするほどあてられる青春物語だ。
文化祭の屋台、ロボットの大会、部活の勧誘
彼らはやりたいことに全力投球。後先なんてものは後で考える。
もうめちゃめちゃ無鉄砲だし、バカ。
煽られるとすぐムキになっちゃうし、ダメって言われるとやっちゃう。
小学生かよバカだなあ。
でもその分なぜかすごく愛しい。
昔は誰もが持ってたはずの素直さを持ってるこの男達が羨ましい。
楽しそうだなあ、自分にもこんな学生時代があったなあ、戻りたいなあ。
読者は読んでいる間ノスタルジックな気持ちになる。
その気持ちのまま終盤を迎えるとしてやられます。
最後の章は大人になったキケンメンバーの話。
実はこの物語、大人になった主人公元山が奥さんに学生時代の武勇伝を話す形で進んでいく。
話しているうちに元山も学生時代を思い返してあの何とも言えない気持ちになる。
最終章で、読者と元山の感情がうまくリンクするのです。
鳥肌ものです。ああいいなあ、エモい。
無意味で無鉄砲で全力だったあの時代に戻りたい。でももうキケンは自分たちのものではない。そんな気持ちから、元山はしばらく母校の文化祭に顔を出せないでいた。だけど、奥さんに話したことをきっかけに文化祭に行くことを決意します。
文化祭に行ってからの話はぜひ実際に読んで浸っていただきたい。
最後の最後、ラストのページの見開きに出会ったときのあの感情はエモい以外に言いようがありません。
久々に学生時代の仲間に会いたくなる、帰省するまえの今こそ読んでほしい一冊です。
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